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Barkley 7-25-2010
バークレーは眠る。
黙々と眠る。
昼も、夜も。
バークレーは16歳のビーグル犬。
2日だけ、病院に泊まっている。
週末、どうしてもどうしても、
家を空けなくてはいけないから、
とジュデイーは言った。
だから、その間、預かってほしいと。
バークレーは眠る。
ケネルで静かに眠る。
食事の時だけ起き上がる。
ガツガツと一気にドライフードを食べる。
そしてすぐまた寝る。
こんこんと寝る。
バークレーの目はほとんど見えない。
ひどいドライアイと白内障。
拭いても拭いても目やにが出る。
バークレーの耳は聞こえない。
バークレーは関節炎で、
ゆっくり立ち上がって、ゆっくり歩く。
よちよちと歩く。
バークレーは呆けていない。
だから無駄吠えはしない。
イビキもかかない。
徘徊もしない。
ただひたすら眠る。
昼も、夜も。
外に抱いていっても、排尿しない。
長く外にいても排便しない。
したい時に、ケネルの中でする。
ベッドの上にする。
そしてすぐまた寝る。
バークレーはあくまでマイペース。
私はジュデイーに言った。
たった2日だけなら、
家にバークレーをおいていって、
誰かに見てもらったらどうか。
わざわざうちにに入院しなくても、と。
ジュデイーには家族がたくさんいる。
初老のダーリンはやさしくて家庭的。
成人した息子と娘は、すぐ近くに住んでいる。
ジュデイーの妹も近くに住む。
2日くらいバークレーの世話を頼むのは
難しいこととは思えない。
そうなんだけど、とジュデイーが言った。
もし、バークレーに何かが起こったら。
突然、熱が出るとか、下痢するとか。
突然ストロークになるとか。
突然心臓発作になるとか。
そうなった時のことを考えて、
病院で預かってほしい、と。
その時、私に、熱い何かが伝わった。
バークレーは本当に愛されているんだ。
バークレーは家族に皆に、大切にされている犬なのだ。
2日の間に、そんなこと起こる可能性は低い。
年はとっても、目も耳も関節も衰えているけど、
バークレーに内科疾患はない。
でもそのわずかの万が一を、
ジュデイーは心配している。
バークレーは眠る。
静に眠る。
バークレーの足が、ピクピクと動いた。
バーークレーの口が、ちょっと動いた。
バークレーは夢を見ている。
何の夢を見ているのか。
はじめてジュデイーに会った子犬の時?
テニスシューズの紐で遊んだ時?
家の中にオシッコをして、叱られた時?
クリスマスツリーのオーナメントをかじって、叱られた時?
ジュデイーの帰りが遅くて、心配して待っていた時?
夕ご飯が遅くて、お腹をすかせた時?
バークレーはジュデイーの家で
16年間の出来事を見てきた。
小学生の子供たちに抱かれて一緒に遊んだ子犬の時。
やがて子供は部活に忙しくなり、
バークレーはちょっと寂しくなった。
ジュデイーが乳がんの手術をした時は、
精神的にジュデイーを支えた。
子供たちが家を出てゆき、
結婚し、
小さな赤ちゃんを抱えて家に帰ってきた日。
おばあちゃんになったジュデイーのほころんだ顔を、
バークレーはじっと見ていた。
独立記念日も、ハロウイーンも、クリスマスも、
家族の写真は、バークレーがいつも一緒だった。
バークレーは愛されながら、
すやすやと眠る。
朝も、昼も、夜も関係ない。
家も、病院も、関係ない。
食べたい時に食べ、
出したい時に排便排尿し。
ひたすら眠る。
こんこんと眠る。
バークレーはこうやって愛されながら、
残りの命をゆっくり、ゆっくり、
やはり静に眠りながら、
過ごしてゆくのだろう。
おやすみ、バークレー。
安心しておやすみ。
ジュデイーは最期まで、
あなたと一緒にいるよ。
最期まで、あなたを愛するよ。
明日の朝一番に、
ジュデイーが迎えにくるからね。
++++++
2011年1月23日
バークレー永眠する。
ジュデイーの腕の中で
天国に旅立つ。
バークレーのご冥福をお祈りします。
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